海外でのビジネスをスマートに！APEC・ビジネス・トラベル・カード（ABTC）とは
海外への出張が多く、その度にビザを申請するのが大変。
アポイントメントの時間が迫っているのに、入国審査に時間がかかって間に合いそうにない。
そんな不満やトラブルを解消できるかもしれない制度がAPEC・ビジネス・トラベル・カード（ABTC）です。
APEC域内の主要な国際空港に設置してあるABTC専用レーンの利用や、ビザなしで入国審査を受けることが可能なカードを外務省が発行しています。
海外出張が頻繁にあるビジネス関係者にとって大変便利な制度となっています。
今回はこのABTC制度の概要や申請要件、申請に必要な書類などをご紹介いたします。
この記事の目次
1. ABTCの制度概要
ABTCはAPEC域内を頻繁に出張する貿易や投資を行うビジネス関係者の移動を円滑にするために、制度参加国・地域の政府が発行する特別なカードです。
現在ABTC制度に完全参加しているのは、オーストラリア・ブルネイ・チリ・中国・香港・インドネシア・日本・韓国・マレーシア・メキシコ・ニュージーランド・パプアニューギニア・ペルー・フィリピン・ロシア・シンガポール・台湾・タイ・ベトナムといった19の国と地域です。（アメリカ・カナダは暫定参加）
これらの国と地域において、あらかじめ事前審査の承認を得ておくことにより、
１、ABTCの有効期限内であれば何回でも、パスポート及びABTCのみ（ビザ不要）で入国審査を受けることができ、
２、入国審査の際に主要な国際空港に設置したABTC専用レーンを利用することが可能な制度となっています。
2. ABTCによって入国した場合に許される活動内容
ABTCはビジネス関係者に発行されるカードですが、「短期間行われる収入又は報酬を伴わない活動（商談・業務連絡・市場調査・投資のための契約締結・納品後の報酬を伴わないアフターサービス等）」に限定されています。これはAPEC域内の貿易や投資が円滑になることを目的とした制度であるためです。
そのため観光などでの使用はできません。また、収入を伴う事業をしたり、報酬を受ける活動を行なう場合には、一般に就労ビザが必要となります。ABTCにより入国し、そのような活動を行なったことが判明した場合には、それぞれの国・地域の法令に従い処罰される可能性もあるので、十分に注意してください。
3. ABTCの有効期限
原則、公布から５年間となっています。ただし、ABTCを発行する時点でパスポートの残存有効期限が5年未満の場合は、そのパスポートの有効期限が適用されます。
4. ABTC専用レーンが設置されている空港、滞在期間
ABTC専用レーンが設置されている空港、ABTCの使用による滞在期間などの情報は、以下のホームページより各参加国・地域が提供する情報をご確認いただくか、掲載されているメールアドレスに直接お問い合わせください。
＊中国・シンガポール・台湾等については、事前承認を受けていない場合はABTC専用のレーンが使用できません。
5. ABTC申請要件
- 有効な日本国旅券を所持していること。
- 申請書その他の提出書類に虚偽の記載がないこと。
- 犯罪歴がないこと。
- 外務大臣が告示で定める次のいずれかの要件に該当していること（ただし，職業運動選手，報道特派員，芸能人，音楽家，芸術家又は同様の職業に当たる方には，交付することができませんのでご注意ください）。
- APECビジネス諮問委員会（ABAC）の日本委員，日本委員代理又は日本委員を補佐する業務に従事する方
- 金額の多寡を問わず，貿易・投資実績がある企業等の経営者又は当該企業等に雇用されている方で，貿易等に関する事業を行うことを目的として参加国・地域への渡航が必要であると認められる方
- ABAC日本支援協議会の構成団体（日本経済団体連合会，日本商工会議所（日本商工会議所の会員である商工会議所を含む），経済同友会及び関西経済連合会）の職員，その団体の会員である機関の経営者又は当該機関に雇用されている方で，貿易等に関する事業を行うことを目的として参加国・地域への渡航が必要であると認められる方
- 貿易等に関する事業を行う機関の経営者又は当該機関に雇用された方で，貿易等に関する事業のうち特に災害復興に資すると認められるものを行うことを目的として参加国・地域に渡航し，かつ，今後同様に渡航することが必要であると認められる方
6. ABTC申請方法
- 申請書類の提出
申請書類を準備し、外務省経済局アジア太平洋経済協力（APEC）室ABTC班まで郵送します。 - 審査
まず、外務省による申請要件に関する審査が行われます。
次に外務省からABTC制度の全参加国・地域に対して事前審査を依頼します。
＊申請者は申請から約２ヶ月程度経過後、オンラインで各国・地域による審査状況や申請番号を確認できるようになります。 - 交付
原則として各国・地域からの事前審査結果が揃ったことを外務省が確認した後、発給・交付手続きが行われ、郵送にて交付されます。
申請受理からABTC交付まで平均約６ヶ月程度を要します。
＊ABTCは原則、全ての参加国・地域の承認が揃ってから発行されますが、一部の国・地域からの承認が欲しい場合、審査結果を待たずに、希望の国・地域のみが記載されたABTCの中途発行を受けることができます。その場合は後からその後に承認があった国・地域を追加することが可能となっています。 - 受領確認書の提出
ABTCを受領した際、受領確認書に必要事項を記入し、メールもしくは郵送・FAXにて外務省APEC室ABTC班あてに送付してください。 - 不交付の場合の通知
ABTCが不交付となった場合は、その旨が通知され、受領した収入印紙付き手数料納付書が申請者に返却されます。
7. ABTC申請書類
一般に新規で申請する場合の提出書類（該当する申請要件によって変わります）
- ABTC申請書
- 顔写真（45mm×35mm）２枚
- パシポート写し（顔写真・身分事項ページ）
- 在職証明書
- 登記事項証明書（もしくは、「四季報」など、所属企業の存在を示す資料の写し）
- 貿易・投資実績を示す文章
- 企業パンフレットなど
- 返信用定型封筒
- 郵便切手（国内414円）
- 収入印紙13,100円分（交付手数料）
8. 最後に
現在は新型コロナウィルスの影響で入国を制限している国・地域も多い状況です。
しかしその後は、滞っていたビジネスの遅れを取り戻すために、より出張の機会が増えたり、ビザ取得手続きや空港など混雑する可能性もあることでしょう。
申請から交付までに多少の時間と、申請書類を揃える手間はかかりますが、ビザが必要な国に行く場合や、空港で入国審査にかかる時間を考慮すれば、ビジネスにプラスとなる制度です。
旅行会社や行政書士など申請の代行を行なっているところもございますので、今の内にABTC取得を検討してみてはいかがでしょうか。
更に詳細な情報は外務省サイトの該当するページをご覧ください。
