インドネシアにおける日系企業の進出状況について

インドネシア、ジャカルタのビル群

1. インドネシアにおける日系企業の進出数

2020年1月時点でのJETROのレポートによると、1489社となっており、8割以上の企業がジャカルタから陸路でアクセスが可能な、ジャカルタ首都特別州、西ジャワ州、バンテン州への進出となっており、その他の中部ジャワ州、東ジャワ州、バタム島・ビンタン島への進出企業は約100社強となっています。
この数は、JETROに登録している企業の数であるため、実際は2000社以上の日系企業が進出している可能性があります。

2. 製造業の分布

JETRO登録企業を主要業種別に分けると、製造業が871社、非製造業が618社となっており、製造業の中では自動車・2輪部品関連、電子機器関連、金属製品、プラスチック関連業種で製造業全体の約半数を占めます。
1970年代からインドネシアへの日系自動車メーカーの現地進出がはじまり、それにともない自動車生産に使用される部品製造の工場が次々と進出した歴史があり、現在ではジャカルタ東部のブカシ、チカラン、カラワンなどのエリアに日系企業が多く入居する工業団地が設立されており、これらの工業団地は日系大手商社により運営されています。
インドネシアでは日系自動車メーカーのシェアが95%以上となっており、2輪に関してもHonda、Yamahaの2社が市場の圧倒的シェアを占めているいることからも、自動車・2輪関連の業種が特に多くなっている状況です。
また、食品関連でも日本の大手企業が広く進出しており、大塚製薬、日清食品、味の素など日本でもお馴染みの企業がインドネシアの拡大を続ける国内市場向けに事業展開をしています。

3. 非製造業の分布

非製造業は商社を含む卸売・小売が全体の約40パーセントと圧倒的に多く、他には建設・プラント関係、運輸・倉庫業が全体の10%強、法務・税務コンサル・人材関連サービス、金融・保険関連、情報通信、不動産業は各業種で非製造業全体の5%~10%前後程度となっています。
足元インドネシアでは2019年より5年計画でインフラ強化を掲げていることもあり、道路整備、鉄道整備、エネルギー事業の更なる拡大が予測されています。
建設・プラント関係においては、近年では日本政府による円借款を受けて開発中のジャカルタ都市高速鉄道(MRT)や、ジャワ・スマトラ連携送電線事業、ジャカルタのタンジュンプリオク港の改修・増強工事や、港へ高架道路の建設工事が日本のODAで推進されており、今後も更なる発展が予想されるため、これらの事業に関わる日系企業の新規進出は今後も増えていくものと思われます。

4.サービス関連企業

経済発展とともに様々な分野で日系企業の事業が拡大するにつれ、現地の日系企業を支えるコンサル・人材関連サービスも増加傾向となっており、これらの分野は引き続き新規進出が拡大していくであろうと見込まれます。
金融の分野では、すでにMUFGやSMBCがインドネシア国内の銀行の筆頭株主になるなど、日系企業の存在は大きなものとなっていますが、すでに大手が進出していることや、インドネシア金融庁による小規模銀行の合併を推奨する方針を受け銀行間の競争が激化していることから、この分野での新規進出は限定的となることが予想されます。
また近年ではインターネットやECサイトを利用したサービス業の拡大が顕著になっており、巨大な内需をターゲットとしたデジタルサービス分野の企業進出が今後増加していくものと思われます。

5. 日系企業のインドネシア進出時期

日系企業全体の進出時期を見ると、製造業では自動車・二輪関連は1990年から増加し、2011~2015年がピークとなっています。
2016年以降は、自動車・二輪関連企業の進出は一段落した傾向となっています。
電気機械/電子機器関連は1990~2000年の進出が最も多く、以後の新規進出数は減少しています。
食品・農水産物関連は2011年~2015年の間に大きな伸びがみられ、2016年~2019年にかけても新規進出は増加している傾向です。
非製造業では、2011年~2015年の進出増加が特徴的で、卸売・小売、商社、倉庫・物流業などの増加がみられました。
建設・プラント関連の大手企業は1990年代以前から当地進出している企業が多く見られますが、非製造業では2016年以降の新規進出は建設/プラント分野が最多となっています。
サービス業分野の新規進出、投資は近年拡大傾向となっており、大きなポテンシャルを持つ国内市場と、拡大を続ける中間層をターゲットにしたサービス業の進出は今後も拡大していくと見込まれています。

まとめ

上記のとおり、近年のインドネシアへの日系企業の進出は、製造業の進出がピークを迎え鈍化し、非製造業の進出が増加しているという傾向がみられます。
90年以前から進出していた建設・プラント関係大手や、1990年から2000年代にかけて増加した自動車・2輪、電子・金属・プラスチック関連、また非製造業では卸売、小売、商社、倉庫・物流業など多岐にわたる業種が既にインドネシアに進出していますが、今後も経済が拡大し、購買力のある中間層が増加していくにつれ、新規サービス業やデジタルベースの消費関連スタートアップ企業進出も増加していくものと思われます。

最後に、20年5月の時点での状況ですが、コロナウイルスの影響を受け、日系企業の多くは駐在員を日本に退避させている状況です。
3月後半頃から退避措置を取る企業が増え、6月~7月頃の帰任を目途にしている企業が多いようですが、各種メディアでも報道されているとおり、インドネシアの感染者数は25000人超え、死者1500人越えとなっており、新規ビザの取得にも時間を要しているようで、まだはっきりとした対策が取れないのが現状です。
まだ先が見えない状況ですが、インドネシア政府も6月4日以降*の外出制限の緩和を検討しており、徐々にでも企業活動が元に戻ってくるのを祈るばかりです。

*こちらの記事は2020年5月31日に寄稿いただきました。
文:インドネシア在住寄稿者

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